Dタイプの中毒を起こす毒きのこ

-胃腸障害,30分~ 3時間後に発症-

〔中毒の特徴〕主に胃腸刺激,30分~ 3時間後に徴候が始まる.

 

〔毒成分と中毒症状〕腹痛・下痢・嘔吐などの症状を示すきのこを便宜的にまとめたもので,毒成分もまだ解明されてないものが多い.中毒症状は種によって,多少異なる.日本のきのこ中毒の大部分はツキヨタケ,クサウラベニタケ,カキシメジの3種が占める.

 

第7グル-プ:主として胃腸障害を引き起こす毒きのこ
クサウラベニタケ Rhodophyllus rhodopolius
ツキヨタケ Lampteromyces japonicus
*カキシメジ Tricholoma ustale
*マツシメジ T.albobrunneum =T. striatum
*コガネホウキタケ Ramaria aurea
*ハナホウキタケ R. formosa
ニガクリタケ Naematoloma fasciculare
*ドクベニタケ Russula emetica
*ドクヤマドリ Boletus venenatus

オオワカフサタケ Hebeloma vinosophyllum
*オオシロカラカサタケ Chlorophyllum molybdites
*ドクカラカサタケ Lepiota neomastoidea
オオワライタケ Gymnopilus spectabilis
*ニセショウロ類 Scleroderma spp. など。

 

〔きのこの見分け方のポイント〕
 ツキヨタケとカキシメジは激しい腹痛と下痢・嘔吐を起こすが,クサウラベニタケは下痢が主体で,腹痛はあまりない.

 

 ツキヨタケは主として山地のブナ帯の 倒木に発生し,傘の色はシイタケに似ているが,柄を割ると基部に紫黒色のしみがあるのが一般的である.しかし,しみのないものもあるので,注意したい.またツキヨタケは短い柄が傘の側方につき,ひだは発光する.シイタ ケとは臭いが異なり,胞子の形も異なる(シイタケは楕円形,ツキヨタケは球形).

 

 シイタケとツキヨタケはきのこに詳しい人には,すぐ区別できるが,初心者には区別しにくいので,毎年ツキヨタケによる中毒が発生している.

 野生のシイタケによく似たきのこを採集したときは,図鑑でよく調べ,きのこに詳しい人に尋ねたりして,正確な名前を調べることが必要である.

 

 ツキヨタケとシイタケの区別は以下の4点を調べるとよいでしょう.

1.ツキヨタケは発光するので,夜に見ると黄白色にヒダが光る.シイタケは発光しない.

2.ツキヨタケは傘の側方に柄がある.シイタケは傘の中心に柄がある.

3.きのこの匂いが両者は異なる.シイタケはお皿にぬるま湯を入れ,シイタケの肉のかけらを入れると,無臭のシイタケの肉から,しばらくしてシイタケ特有の香りが出てくる("シイタケ臭").ツキヨタケはシイタケ臭とは異なるにおいである.

4.顕微鏡が使える場合は,ひだの表面にできる胞子を調べると,両種は簡単に区別できる.ツキヨタケの胞子は球形であるが,シイタケの胞子は楕円形である.

 

 ツキヨタケからは毒成分としてイル-ジンS(ランプテロ-ル)が知られている.この化合物は抗腫瘍性とマウスに毒性を示すが,ツキヨタケ中毒症状の全てを説明することは出来ないと言われている.なお発光に関する成分としてランプテロフラビンが単離された.

 

ツキヨタケ Lampteromyces japonicus
ツキヨタケ Lampteromyces japonicus
カキシメジ Tricholoma ustale
カキシメジ Tricholoma ustale

 クサウラベニタケはひだが始め白色,後成熟するとピンク色になる.胞子は5角形.柄は細く,中空で折れやすい.傘は淡褐色でやや肉色を帯びる(食用のウラベニホテイシメジ Rhodophyllus crassipes は大型のきのこで,柄は太く,中実.傘は灰褐色で,粘性はなく,白色絹糸状の繊維におおわれ,かすり模様を表わす.またクレ-タ-状のあばたも出来る).

 

 クサウラベニタケからはコリン,ムスカリジン,ムスカリンが嘔吐誘発物質として知られている.下痢を起こす成分として,最近,分子量約 4万のタンパク性の物質が抽出されている.

 

クサウラベニタケ Rhodophyllus rhodopolius (左) 右はウラベニホテイシメジ(食用)
クサウラベニタケ Rhodophyllus rhodopolius (左) 右はウラベニホテイシメジ(食用)

 ニガクリタケは  枯れ木に生え,全体が硫黄色で,ひだは黄色~オリ-ブ色,のち紫褐色,肉は苦味がある.ニガクリタケは死亡例もある.毒成分としてファシキュロ-ル Eと Fが単離された.ファシキュロ-ルは真核生物の細胞内に分布し,カルシウム結合性のタンパク質カルモジュリンに強い阻害作用がある.

 

ニガクリタケ Naematoloma fasciculare
ニガクリタケ Naematoloma fasciculare

 オオワライタケは 枯れ木に生え,全体が黄金色~帯褐橙黄色で,苦味がある.幻覚・幻聴を伴う精神の興奮や狂騒状態は第6グル-プのシビレタケ類の症状に近い.しかし我国の このきのこからはシロシビンは検出されず,苦味成分としてギムノピリンA,B(gymnopilin A,B)が単離された。これが毒性の本体ではないかと考えられている.

 

オワライタケ Gymnopilus spectabilis
オワライタケ Gymnopilus spectabilis

 ドクベニタケは生で食べると中毒するが,十分料理すれば食べられる.このように生で食べると中毒する例はかなり知られている(ヒダハタケ Paxillus involutus , シャグマアミガサタケ(前述),ガンタケ Amanita rubescens, ナラタケArmillariella melleaなど).

 

 ウスタケは食用とされているが,時々腹痛をともなう中毒がある(1979年長野県など).ウスタケからはノルカペラ-ト酸が抽出され,これが中毒原因物質ではないかと考えられている.十分煮こぼしてから食用にされるようお勧めする(フジウスタケGomphus hujisanensisnも同様).ワカフサタケ属 (Hebeloma)きのこは分類が困難で,我国の種もまだ不明のものが多い.

 

 オオワカフサタケ(H. crustuliniforme)は生で食べると毒性があり,H. sinapizans Gill. (= H. crustuliniforme sensu Ricken)は毒性であるという.北米からH. crustuliniformeによる下痢,嘔吐,けいれんを伴う中毒が報告されている.我国からはワカフサタケ属による中毒の報告は今までにないようだが,アカヒダワカフサタケ(Hebeloma vinosophyllum) の子実体の含水メタノ-ルエキスをマウス腹腔内に投与すると,神経障害性の致死毒性が認められ,毒成分としてトリテルペン配糖体であるヘベビノサイド (Hebevinoside) I ~XIが単離された.毒性発現にはアグリコンの16位にグルコ-スが結合することが必須であるという.ヘベビノサイドVIのマウスに対するLD50は66mg/ kg (i.p.) である.