Eタイプの中毒を起こす毒きのこ

-手足の先が赤く腫れ,激痛が1か月,発症に 5日-

〔中毒の特徴〕発症に 5日以上かかり,手足の先,ペニスのみが赤く腫れ,激痛が1か月以上続く.

 

〔毒成分と症状〕手足の先が赤く腫れる末端紅症で,徴候は食後4 ~ 5日後に出る.激痛は1か月以上続くなど特異な症状として有名である.クリチジン,アクロメリン酸 A,アクロメリン酸 B などの毒物質と,無毒のクリチオネイン,4 -アミノピリジン-2,3 -ジカルボン酸(4 -アミノキノリン酸)が抽出されている .  アクロメリン酸 A, B は比較的強い毒で,生のきのこ16.2 kg から Aが約 110μg , Bが約 40μg 単離された.クリチオネインは弱毒である.アクロメリン酸 A, B とも,グルタミン酸アゴニストとして作動し,ザリガニの神経筋標本を使った実験によれば,グルタミン酸関連化合物中最も強い活性を示す.

 

 神経興奮作用が認められるので,ドクササコの中毒は,タイプ B ないし C に移すのが妥当かもしれない.

 

第8グル-プ
 日本ではドクササコ Clitocybe acromelalga 1種のみが,知られている.

セイヨウドクササコ Clitocybe amoenolens はモロッコから地中海沿岸に分布する種で,近年フランス南部のモーリエン渓谷でドクササコ同様の中毒が報告された.

 

〔見分け方〕ドクササコは主として竹薮に生え,日本と朝鮮半島に分布する.傘は漏斗型で,傘の表面と柄は茶色,ひだは白色.胞子は楕円形で3~4   X  2.3~3μm.近縁種で食用のカヤタケ Clitocybe gibba は胞子の大きさが異なる(7~7.5 X 4~4.5μm ).

 アフリカ北部からヨーロッパ地中海沿岸に分布する Clitocybe amoenolens  は,ドクササコより胞子がやや大きい(5 x 3.5μm 

 

〔治療法〕特効薬はなく,ATP やニコチン酸の注射がやや有効.昔は冷たい清水に手足を漬け激しい痛みを我慢したという.長期間水に手足を漬けるため,肉はふやけ,骨が表われることがし ばしばあり,老人や子供は死亡することもあるが,回復してもケロイド状態になる.そのためヤケドキン(火傷菌)とも呼ばれる.

 中毒にかかり入院した人は病院中に響くような大声で「痛い.痛い」と叫ぶことがあるが,近年は神経遮断剤を注射し,痛みを緩和する治療法も行われている.


 

ドクササコ Clitocybe acromelalga
ドクササコ Clitocybe acromelalga